僕の頭の備考欄

徒然なるままに日々の発見を書き綴ります。数学/情報技術/ダンス 要するに雑記です。

【数理経済学】産業連関表による経済波及効果分析

あらゆる産業はその製品やサービスを他の産業に販売したり, 生産やサービスの提供に必要なものを他の産業から購入したりと相互に関連し合っています。よって, ある産業に対する需要に増減があると他の産業にもその影響が波及します。産業連関表というものを使って経済波及効果を分析する方法を考えます。

年間を通しての産業間の取引や投資などの関係を表にまとめたものを産業連関表(表1) といい, ある産業が他の産業にどれだけ生産物を販売したか, あるいはある産業が他の産業からどれだけ生産物を購入したかを示しています。

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表1. 産業連関表

ここで, 最終需要とは原材料などとして他の産業に中間消費されるものではなく, 家計や政府によって消費される最終的な需要のことです。 粗付加価値額というのは人件費や賃借料や租税公課などの総額のことですが, 今回の話にはあまり関係しません。

前提として表1について,

\begin{align} &\sum _{i=1} ^{n} x_{ij} + V_j = X_j \\ &\sum _{j=1} ^{n} x_{ij} + F_i = X_i \end{align}

が成り立ちます。

産業連関表の縦列に注目します。総生産額 X_j 1としたときの各 x_{ij} , V_jの割合を並べた表を投入係数表(表2)といいます。すなわち,

\begin{align} a_{ij} = \frac{x_{ij}}{X_{j}}\\ v_{ij} = \frac{V_{ij}}{X_{j}} \end{align}

とすれば投入係数表は以下のようになります。

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表2. 投入係数表

このとき, 各 a_{ij}について

\begin{align} A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{n1} & a_{n2} & \cdots & a_{nn} \end{pmatrix} \end{align}

としたとき, 行列 A投入係数行列といいます。

また, 各産業の最終需要と総生産額の列ベクトル

\begin{align} F = \begin{pmatrix} F_{1} \\ F_{2} \\ \vdots \\ F_{n} \end{pmatrix} \hspace{10mm} X = \begin{pmatrix} X_{1} \\ X_{2} \\ \vdots \\ X_{n} \end{pmatrix} \end{align}

と投入係数行列Aについて,

\begin{align} AX + F = X \end{align}

が成り立ちます。これを Xについて解くと,

\begin{align} X = (I - A) ^{-1} F \hspace{15mm} \cdots \ (1) \end{align}

となります。式 (1) (I - A) ^{-1} レオンチェフ逆行列あるいは逆行列係数といいます。レオンチェフ逆行列を用いると, ある産業の最終需要に一定の変動があった時に他の産業の総生産額にどれだけ変化が生じるかを計算することができます。

以下にその例を示します。

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上のような産業連関表があったとします。これに対する投入係数表は次のようになります。

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よって, 投入係数行列は

\begin{align} A = \begin{pmatrix} 0.1 & 0.4 \\ 0.5 & 0.3 \end{pmatrix} \end{align}

です。

これに対するレオンチェフ逆行列は,

\begin{align} (I - A)^{-1} &= \left( \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} 0.1 & 0.4 \\ 0.5 & 0.3 \end{pmatrix} \right) ^{-1} \\ &= \begin{pmatrix} 0.9 & -0.4 \\ -0.5 & 0.7 \end{pmatrix} ^{-1} \\ &= \frac{1}{0.9 \cdot 0.7 - (-0.5) \cdot ( -0.4)} \begin{pmatrix} 0.7 & 0.4 \\ 0.5 & 0.9 \end{pmatrix} \\ &= \frac{10}{43} \begin{pmatrix} 7 & 4 \\ 5 & 9 \end{pmatrix} \end{align}

となります。

例えば産業1と産業2の最終需要にそれぞれ10億円, 20億円のプラスの変動があったとします。このとき

\begin{align} F = \begin{pmatrix} F_{1} \\ F_{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 10 \\ 20 \end{pmatrix} \end{align}

とし, 式(1)を計算すると,

\begin{align} X &= (I - A) ^{-1} F \\ &= (I - A) ^{-1} \begin{pmatrix} 10 \\ 20 \end{pmatrix} \\ &= \frac{10}{43} \begin{pmatrix} 7 & 4 \\ 5 & 9 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 10 \\ 20 \end{pmatrix} \\ &=\frac{10}{43} \begin{pmatrix} 150 \\ 230 \end{pmatrix} \\ &\approx \begin{pmatrix} 34.9 \\ 53.5 \end{pmatrix} \\ \end{align}

となります。この結果は, 最終需要の変動により産業1の総生産額 X_1が34.9億円, 産業2の総生産額 X_2が53.5億円UPするということを示しています。