【微分幾何】空間曲線の曲率と捩率とFrenet-Serreの公式
空間曲線の曲率と捩率, フレネ・セレの公式について定義とその意味を概観する.
実数上の区間のパラメータによって定まる曲線 を空間曲線という. (は平面曲線.)
この空間曲線に対して,
\begin{align} s(a, b) = \int _a ^b \left| \frac{d}{dt} f(t) \right| dt = \int _a ^b \sqrt{\left(\frac{d}{dt} x(t)\right)^2 + \left(\frac{d}{dt} y(t)\right)^2 + \left(\frac{d}{dt} z(t)\right)^2} dt \end{align}
を曲線のからまでの弧長といい, 曲線のからまでの長さを表す.
この弧長に関して弧長パラメータという概念を導入する. いま, 曲線上の点までの弧長を
\begin{align} s(a, t) = \int _a ^t \left| \frac{d}{dt} f(t) \right| dt = \int _a ^t \sqrt{\left(\frac{d}{dt} x(t)\right)^2 + \left(\frac{d}{dt} y(t)\right)^2 + \left(\frac{d}{dt} z(t)\right)^2} dt \end{align}
としたとき, の右辺をとおくと, 逆関数が存在してと書ける. これを用いて
\begin{align} f(t) = f(L^{-1}(s)) \end{align}
とすると曲線の弧長をパラメータとした表示が得られ, このを弧長パラメータ, を弧長パラメータ表示という.
わざわざ弧長を曲線のパラメータとして用いるのは, 後述する曲線の接ベクトルが自然に単位ベクトルになるから. この便利な性質から曲率などの話をする際には曲線を弧長パラメータ表示に変換して議論を進めることが多い. (もちろん弧長パラメータ表示を用いなくても曲率や捩率は計算できる.)
以下, 通常のパラメータを, 弧長パラメータをとして用いる.
曲線に対して, をのにおける接ベクトルといい, 点における接線方向のベクトルを表す.
この接ベクトルを正規化したものを単位接ベクトルといい, で表す. つまり,
\begin{align} e_1 (t) = \frac{\frac{df(t)}{dt}}{\left|\frac{df(t)}{dt} \right|} \end{align}
これを弧長パラメータを用いて定義すると以下のようになる.
定義(単位接ベクトル)
空間曲線とその弧長パラメータに対して,
\begin{align} e_1 (s) = \frac{df(s)}{ds} \end{align}
を単位接ベクトルという.
単位接ベクトルを用いて曲率ベクトルと曲率が定義できる.
定義(曲率(Cuvation))
弧長パラメータ表示された曲線とその単位接ベクトルに対して,
\begin{align} k(s) = \frac{e_1 (s)}{ds} = \frac{d^2 f(s)}{ds^2} \end{align}
を曲率ベクトルという.
曲率に対して
\begin{align} \kappa (s) = |k(s)| \end{align}
を曲率という.
曲率ベクトルは点における曲線の法線ベクトルである.
曲率は曲率ベクトルの絶対値であり, 単位長さあたりの接ベクトルの変化率を表す. より直感的には点における曲線の曲がり具合を表している.
曲率ベクトル(法線ベクトル)を正規化したものを主法線ベクトルといいで表す.
定義(主法線ベクトル)
弧長パラメータ表示された空間曲線とその曲率ベクトルに対して
\begin{align} e_2 (s) = \frac{k(s)}{\kappa (s)} = \frac{k(s)}{|k(s)|} \end{align}
を主法線ベクトルという.
単位接ベクトルと主法線ベクトルの外積をとったものを従法線ベクトルといいで表す.
定義(従法線ベクトル)
弧長パラメータ表示された空間曲線とその単位接ベクトル, 主法線ベクトルに対して,
\begin{align} e_3 (s) = e_1 (s) \times e_2 (s) \end{align}
を従法線ベクトルという.
ここでは正規直交基底(互いに直交し長さが1である)をなす.
定義(Frenet標構)
弧長パラメータ表示された空間曲線とその単位接ベクトル, 主法線ベクトル, 従法線ベクトルに対して,
正規直交基底をFrenet標構あるいは動標構という.
主法線ベクトル, 従法線ベクトルを用いて捩率が定義される.
定義(捩率(Tortion))
弧長パラメータ表示された空間曲線とその主法線ベクトル, 従法線ベクトルに対して,
を捩率という.
捩率(tortion)は曲線の点における曲線のねじれ具合を表している. 具体的には点における単位接ベクトルと主法線ベクトルが張る平面に対する曲線の離れ具合を示す量である.
ここで, 単位接ベクトル, 主法線ベクトル, 従法線ベクトル, そして曲率と捩率の関係を示した式をフレネ・セレの公式という.
定理(Frenet-Serretの公式)
弧長パラメータ表示された空間曲線とその接ベクトル, 主法線ベクトル, 従法線ベクトル, 曲率, 捩率に対して,
ここで重要なのはフレネ・セレの公式から, 曲率と捩率が定まると空間曲線の形が一意に定まるということ.